
文化庁が毎年行っている『国語に関する世論調査(平成29年度)』で調査された6つの新語・3つの意味の誤用・3つの言い方の誤用についてまとめてみました。
※実施時期は平成30年3月、調査対象は全16歳以上の男女、調査対象数は3579人、有効回答数(率)は2022人(56.5%)です
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新語を聞いたこと・使ったことがあるかどうか
下記6つの新語を聞いたことがあるか否か、また使ったことがあるか否かについての調査結果です。
ほぼほぼ
「ほぼほぼ」の意味
完全にかなり近いさま。確実にかなり近いさま。ほぼを強調した表現。
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(31.0%)
・聞いたことはあるが使うことはない(41.2%)
・使うことがある(27.3%)
・分からない(0.5%)
年代別の割合を見ると、若い年代ほど使うと答えた人の割合が高く、16~19歳は56.6%で20代は60.5%もありました。
「聞いたことがない」と答えた人の割合は60代が42.5%、70歳以上が59.3%となっています。50代以下の年代は8割前後の人が「ほぼほぼ」という言葉を知っているようですが、高齢層にはあまり知られていないようです。
後ろ倒し(うしろだおし)
「後ろ倒し(うしろだおし)」の意味
予定・見込みを遅らせて先に延ばすこと。先送り。
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(42.5%)
・聞いたことはあるが使うことはない(44.5%)
・使うことがある(12.3%)
・分からない(0.8%)
「後ろ倒し」は、使うことがあると答えた人の割合が
全ての年代で2割以下でした。まだこの言葉は、一般化していないようですね。
上から目線(うえからめせん)
「上から目線(うえからめせん)」の意味
偉そうな態度を取ること。偉そうな言い方をすること。上の立場の者が下の立場の者に示す言動。
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(4.8%)
・聞いたことはあるが使うことはない(37.2%)
・使うことがある(57.4%)
・分からない(0.5%)
「上から目線」を「使うことがある」と答えた割合が最も高かったのは16~19歳の81.9%で、20代・30代・40代も70%以上になりました。50代は66.8%、60代は50.1%と、年代が上がるに従って使う人の割合は低くなっていきますが、5割を下回ったのは70歳以上(30.7%)だけでした。
「上から目線」は一般化した言葉といえるでしょう。
タメ口(ためくち・ためぐち)
「タメ口(ためくち・ためぐち)」の意味
対等の立場で相手と話すこと。年齢の低い者が高い者に対等の話し方をすること。
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(12.6%)
・聞いたことはあるが使うことはない(35.2%)
・使うことがある(51.0%)
・分からない(1.2%)
年代別にみると、「使うことがある」を選んだ割合は、16歳~19歳・20代・30代で8割を超えています。しかし、年代が高くなるに従って、使う人の割合が低くなっています。
「聞いたことがない」と答えた人の割合は、70歳以上(35.1%)以外の全年代で10%を切りました。
「タメ口」という言葉を、多くの人が使っているようですね。
ガチ
「ガチ」の意味
真剣に。真面目に。本当に。本気で。
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(11.1%)
・聞いたことはあるが使うことはない(46.9%)
・使うことがある(41.0%)
・分からない(0.9%)
年代別にみると、「聞いたことがない」と答えた人の割合は、70歳以上(29.7%)以外の全ての年代で10%を切りました。
また、若い人ほどこの言葉を使っており、年齢が上がるに従って使う人の割合が低くなっています。
立ち位置(たちいち)
「立ち位置(たちいち)」の意味
人間関係や社会の中で、その人が取る立場
質問
例文の言い方を聞いたこと・使ったことがあるか
回答
・聞いたことがない(10.1%)
・聞いたことはあるが使うことはない(40.5%)
・使うことがある(48.5%)
・分からない(0.9%)
年代別にみると、「使うことがある」を選んだ割合は、16歳~19歳・20代・30代で7割前後ありました。しかし、年代が高くなるに従って、使う人の割合が低くなっています。
「聞いたことがない」と答えた人の割合は、70歳以上(25.7%)以外の全ての年代で10%を切りました。
「立ち位置」は一般化した言葉といえるでしょう。
慣用句などの本来の意味を選択できるかどうか
下記3つの慣用句などについて、本来の意味と誤った意味を選択させた調査結果です。
檄を飛ばす(げきをとばす)
本来の意味…自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること
誤った意味…元気のない者に刺激を与えて活気付けること
本来の意味を選んだ人の割合
・22.1%(29年度)
・19.3%(19年度)
・14.6%(15年度)
誤った意味を選んだ人の割合
・67.4%(29年度)
・72.9%(19年度)
・74.1%(15年度)
年々、「檄を飛ばす」を誤用する人の割合が下がっていますが、7割近くの人が誤った意味で捉えているようです。
やおら
本来の意味を選んだ人の割合
・39.8%(29年度)
・40.5%(18年度)
誤った意味を選んだ人の割合
・30.9%(29年度)
・43.7%(18年度)
本来の意味を選ぶ人の割合は殆ど変わりませんが、誤った意味を選ぶ人の割合が10%ほど下がっています。
なし崩し
本来の意味を選んだ人の割合
・19.5%(29年度)
誤った意味を選んだ人の割合
・65.6%(29年度)
全ての年代で誤った意味を選んだ人の割合が、本来の意味を選んだ人の割合の3倍以上になりました。
誤った意味が完全に定着していますね。
慣用句などの本来の言い方を選択できるかどうか
下記3つの慣用句について、本来の言い方と誤った言い方を選択させた調査結果です。
采配を振る(さいはいをふる)
本来の言い方「采配を振る」を選んだ人の割合
・32.2%(29年度)
・28.6%(20年度)
誤った言い方「采配を振るう」を選んだ人の割合
・56.9%(29年度)
・58.4%(20年度)
本来の言い方をする人が微増し、誤った言い方をする人は微減していますが、多くの人が誤用しています。
溜飲を下げる(りゅういんをさげる)
意味…不平不満・恨みなどを解消して、胸がすっとする
本来の言い方「溜飲を下げる」を選んだ人の割合
・37.4%(29年度)
・39.8%(19年度)
誤った言い方「溜飲を晴らす」を選んだ人の割合
・32.9%(29年度)
・26.1%(19年度)
誤った言い方をする人の割合が、ここ10年で6.8%上がっています。
誤った言い方をする人の割合を年代別に見ると、殆どの年代で3割前後でした。しかし、16~19歳だけが56.6%も誤った言い方を選んでおり、その割合の高さが突出しています。
白羽の矢が立つ(しらはのやがたつ)
意味…多く中から犠牲者として選び出される。多くの中から特に指定して選び出される。
本来の言い方「白羽の矢が立つ」を選んだ人の割合
・75.5%(29年度)
誤った言い方「白羽の矢が当たる」を選んだ人の割合
・15.1%(29年度)
誤った言い方をしている人の割合は、全ての年代で2割以下しかしない、という結果がでました。
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